【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
あの日の続き
私はノックをしてガラスエリアに入った。
「……おはようございます」
ふたりがにらみあったまま、「おはよう」と口々に言う。私の存在には、とうに気づいていたんだろう。
だれかが出社してきて、話を聞かれでもしたらことだ。ドアを閉めようとしたとき、それをもぎ取るように刈宿さんが、再び押し開けた。
常識的な配慮をあざ笑うかのようなタイミングだったのは、きっとわざとだ。
「内示を楽しみに待つといい」
「僕がおとなしく従うとでも?」
「会社を辞めるかい? ご自由にどうぞ。そのほうが僕もうれしい」
ドアのバーを握っていた私の手を取り、軽いキスをする。急いで手を引っこめ、スカートのすそで拭った。
「諏訪さんが辞めるなら、私も……」
「きみは辞めさせないよ。この僕がね」
なんだって?
腕になにかが触れた。一臣さんだ。私の腕を取り、自分のほうへ引き寄せる。
私は彼のそばへ数歩寄った。
「何度でも言おう」と刈宿さんが片手を広げる。
「きみが手に入れるはずだったものは、僕がもらう。左藤くんも含めてね」
「献身的なエンジニアたちも、プロジェクトと一緒に本体へつれていってくださるんですよね?」
「どうかな。彼らはきみのシンパが多い。正直なところ、僕の好みじゃない」
「武器を置いていくつもりですか? 彼らは戦闘力そのものです」
「僕の武器は別にある」
刈宿さんが、にっと笑う。
「きみが用意してくれた、例の営業部隊。きみは窓口の役目を頑として譲らなかったね。だが僕も手を尽くし、先方のフロントと話をすることができた」
「それはすごい」