【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「彼らとの連絡役をひとり占めしようとしたんだろうけど、残念。僕の交渉で、彼らの部隊の一部をモメントに置くと約束させたよ。これがどれほどの戦力かわかるかい?」
「今いる営業を全員解雇しても、営業成績は上がり続けるでしょうね」
冷静に評価し、一臣さんがうなずく。
あの集団を社内に引き入れたのだとしたら、刈宿さんがもてはやされるのもむべなるかなだ。本体はテック以上に、営業力が課題なのだ。
彼らのポリシーを尊重した、一臣さんの潔癖さが裏目に出た。
もはやなにも言うことがなくなった私たちを満足そうに見て、刈宿さんはゆっくりとガラスドアの向こうにすべり出ていった。
「一臣さん……」
「潮時だな」
小さく吐き捨てた彼に、私は旋律した。
まさか、あきらめてしまうつもりですか。
「一臣さんのいない会社で、私は働きませんから」
デスクの向こうへ回りこみ、引出しを開けていた一臣さんが、びっくりしたように顔を上げる。
「バカ言うな、さっき聞いたろう。あいつはなんらかの手を回して、きみを辞めさせまいとしてる。無茶したらきみもリスクを負うぞ」
「かまいません」
「俺がかまう。きみは冒険なんてする必要はない」
「あなたのそばにいるためなら、します!」
ぽかんとしている彼に、つかみかかる勢いで詰め寄った。
「私、あなたが好きです。一臣さん」
彼の目が大きく見開かれる。
「自分を信じることを、あなたが教えてくれたんです。私は正しいと思う道を行きます。あなたを、一番近くで支えるために」
「花恋……」
「一臣さんも、あきらめないで」
やりたいことを、やりたいようにやってください。それが一番あなたらしい。
一臣さんはじっと私を見つめ、それから引出しに目を落とした。
そして、私の肩をぐっと抱き寄せた。
「ありがとう」
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