【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「そうだよ。言っただろう、おもしろくないって。僕の気持ちの問題さ。だが気持ちこそ、バカにできないものじゃないかい?」
「同感です」
うなずくと、一臣さんはふと腕時計を見て、なにげなく言った。
「ところで今日は、何月何日でしたっけ。最近どうも忘れっぽくて」
「5月20日だよ、しっかりしてくれ」
ピ、と電子音がした。
一臣さんがいつの間にかスマホを取り出し、いじっている。スマホには短いケーブルで、小さな黒い端末のようなものが接続されている。
コツ、と彼が画面を叩くと、聞きおぼえのある声が聞こえてきた。
『本体の副社長は、グループの人事責任者を兼ねている。彼は僕の味方だ。これで納得したかい?』
刈宿さんは呆然としている。ふうっと息をつき、一臣さんは口元に手をあてて、考えこむしぐさを見せた。
「なるほど、副社長ね。吸収した側で悠々自適の会社生活をするつもりが、気づけばまわりをパスウェイ出身者に固められ、離れ小島なんて言われている彼ですね。あなたのバックは彼でしたか。たしかに影響力はまだお持ちだ」
「……ハメたな」
「悪く思わないでください、保険です。それと、武器とおっしゃっていた営業部隊のフロントですが、あなたの言葉を借りるなら、“彼は僕の味方”です」
自分の窮地が理解できてきたんだろう、刈宿さんの顔が、だんだんと青ざめる。
「……はったりだ」
「疑り深いですね。……もしもし、俺だ」
『やあ。先日はどうも』
一臣さんのスマホから、若い男性の声がした。
「モメントに駐在するという話が進んでいるそうだが。宗旨替えか?」
『いや、知らないな』
「嘘だ! 何度も弊社へ出向き、打ちあわせをしたでしょう!」
電話の相手は少し沈黙し、『刈宿さんですか?』とまったく変わらない、冷静な口調で尋ねた。刈宿さんの声は震えている。
「営業員を受け入れる準備があるとお話したはずだ」
『お聞きしました』
「モメントの未来は、あなたがたにかかっていると……」
『お聞きしました』
「同感です」
うなずくと、一臣さんはふと腕時計を見て、なにげなく言った。
「ところで今日は、何月何日でしたっけ。最近どうも忘れっぽくて」
「5月20日だよ、しっかりしてくれ」
ピ、と電子音がした。
一臣さんがいつの間にかスマホを取り出し、いじっている。スマホには短いケーブルで、小さな黒い端末のようなものが接続されている。
コツ、と彼が画面を叩くと、聞きおぼえのある声が聞こえてきた。
『本体の副社長は、グループの人事責任者を兼ねている。彼は僕の味方だ。これで納得したかい?』
刈宿さんは呆然としている。ふうっと息をつき、一臣さんは口元に手をあてて、考えこむしぐさを見せた。
「なるほど、副社長ね。吸収した側で悠々自適の会社生活をするつもりが、気づけばまわりをパスウェイ出身者に固められ、離れ小島なんて言われている彼ですね。あなたのバックは彼でしたか。たしかに影響力はまだお持ちだ」
「……ハメたな」
「悪く思わないでください、保険です。それと、武器とおっしゃっていた営業部隊のフロントですが、あなたの言葉を借りるなら、“彼は僕の味方”です」
自分の窮地が理解できてきたんだろう、刈宿さんの顔が、だんだんと青ざめる。
「……はったりだ」
「疑り深いですね。……もしもし、俺だ」
『やあ。先日はどうも』
一臣さんのスマホから、若い男性の声がした。
「モメントに駐在するという話が進んでいるそうだが。宗旨替えか?」
『いや、知らないな』
「嘘だ! 何度も弊社へ出向き、打ちあわせをしたでしょう!」
電話の相手は少し沈黙し、『刈宿さんですか?』とまったく変わらない、冷静な口調で尋ねた。刈宿さんの声は震えている。
「営業員を受け入れる準備があるとお話したはずだ」
『お聞きしました』
「モメントの未来は、あなたがたにかかっていると……」
『お聞きしました』