【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
とはいえ私たちは気まずく顔を見あわせ、「中で話そう」と彼が指さした会議室に入った。
久しぶりに会った。
彼は全国の主要市場をめぐる一週間の出張から帰ったところで、午前中は本体にいたはずだ。最近こういう生活が多く、社内で見かけない。
そのぶん私が済ませておく仕事も多く、ボスとしての指示や確認はしょっちゅう来るし、一臣さんとしてもまめに連絡をくれた。
【ホテルがきれいだ】とか写真つきでメッセージが来るので、笑ってしまう。
ふうっと息をついて、一臣さんは会議室の椅子に身を沈めた。
「お帰りなさい。お疲れさまでした」
「うん。花恋もサポートありがとう。遠隔で指示ばかり飛ばして悪かった」
「お気づかいなく。こちら、のちほどお渡ししようと思ってたんですが」
私は出先から依頼を受けていた、決済サービスの大型アップデートの詳細資料を、丸いテーブルの上に置いた。
「まとまった情報がなかったので、私のほうでまとめるほかなく」
彼がそれを取り上げ、目を通す。
「わかりやすい。ありがとう」
「最近、チームごとの主体性が強まりすぎたせいか、情報共有がおろそかになっている気がします。のんきに資料を作る暇などないという状況もわかりますが、なおざりにしていいものではないのに」
「目先のスピード感に酔ってると、バカバカしい作業に見えてしまう部分なんだよな……」
「必要なときに情報がないというのは、それだけでインシデントです」
「意識の問題の話は一番厄介だ。こういうところは本体のほうがしっかりしてる。合流したとき、いい影響を受けてくれたらいいんだが」
おやっと思った。ということは……。
「プロジェクトを、つれていけることになったんですね?」
「もちろん。グループの核としての自覚を持つ時期だ。まあそのへんの現場の組織編制は未発表だから、ここだけの話に」
口元で人差し指を立てる一臣さんをまねて、「はい」と私も同じしぐさをした。
「さらにここだけの話なんだが」
「はい?」
久しぶりに会った。
彼は全国の主要市場をめぐる一週間の出張から帰ったところで、午前中は本体にいたはずだ。最近こういう生活が多く、社内で見かけない。
そのぶん私が済ませておく仕事も多く、ボスとしての指示や確認はしょっちゅう来るし、一臣さんとしてもまめに連絡をくれた。
【ホテルがきれいだ】とか写真つきでメッセージが来るので、笑ってしまう。
ふうっと息をついて、一臣さんは会議室の椅子に身を沈めた。
「お帰りなさい。お疲れさまでした」
「うん。花恋もサポートありがとう。遠隔で指示ばかり飛ばして悪かった」
「お気づかいなく。こちら、のちほどお渡ししようと思ってたんですが」
私は出先から依頼を受けていた、決済サービスの大型アップデートの詳細資料を、丸いテーブルの上に置いた。
「まとまった情報がなかったので、私のほうでまとめるほかなく」
彼がそれを取り上げ、目を通す。
「わかりやすい。ありがとう」
「最近、チームごとの主体性が強まりすぎたせいか、情報共有がおろそかになっている気がします。のんきに資料を作る暇などないという状況もわかりますが、なおざりにしていいものではないのに」
「目先のスピード感に酔ってると、バカバカしい作業に見えてしまう部分なんだよな……」
「必要なときに情報がないというのは、それだけでインシデントです」
「意識の問題の話は一番厄介だ。こういうところは本体のほうがしっかりしてる。合流したとき、いい影響を受けてくれたらいいんだが」
おやっと思った。ということは……。
「プロジェクトを、つれていけることになったんですね?」
「もちろん。グループの核としての自覚を持つ時期だ。まあそのへんの現場の組織編制は未発表だから、ここだけの話に」
口元で人差し指を立てる一臣さんをまねて、「はい」と私も同じしぐさをした。
「さらにここだけの話なんだが」
「はい?」