【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「こういう話になるとしどろもどろになるのが、おかしくて」
「複雑な気分になるんじゃなかったのか?」
「なりますが、興味もあります。わりと奔放でした?」
私の頭をなでながら、彼が首筋にキスをする。渋々といった声で返事がある。
「そういう時代もあった」
「いい男ですから、しょうがないですね」
「やめてくれ。いたたまれない」
恥ずかしそうに顔を押しつけてくるので、その頭を抱いてみた。動物が甘えるみたいに、押しつける力が強まる。なんだか感動だ。
「逆にお聞きしたいです。私になにひとつ経験がないのを、どう感じますか?」
ふと彼の動きが止まった。腕をついて上半身をもたげ、私を見下ろす。
表情は真剣で、笑いもごまかしもない。
「怖いよ」
そう言ってから、目を伏せるようにして、少し柔らかい声を出す。
「でも、うれしい。すごく」
「私、がんばりますので」
「うん。たぶん、きついだろうけど」
視線が上がり、真正面から私を捉えた。口には出していなかったけれど、俺を怖がらないで、と聞こえた気がした。
はい、怖がりません。
見せられるような体型でもない。段取りの知識もない。だけどここまでさらけ出して、あなたに預けることができたのは、相手があなただからです。
あなたがくれた自信が、チャンスをつかむ力になった。
ゆっくりと唇が重なった。おしゃべりの時間は終わりだと、告げているようなキスだった。
唇を割って、舌がすべりこんでくる。私の舌を見つけると、味をおぼえこませるように絡みあう。
この人にも、こんな征服欲があったのかと驚くような、深く貪るキス。
いや、違う。私を支配しようとしているわけじゃない。
ただ純粋に、ぶつけてくれているだけだ。
“欲しい”と。
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