【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
なにもないフローリングの部屋で、ペットボトルのお茶をひと口飲む。ボトルに詰めてきたぶんは会社で飲み干してしまった。
作業を再開する。ネットで買える家具を検索しながら、寸法をメジャーで再現し、置いたときのイメージをつかむ。
メジャーは来る途中、コンビニで買ってきた。
外で物音がした。この部屋は玄関ドアと同じ面が窓になっていて、カーテンを閉めていても、玄関ポーチに人が入ってくるのが音でわかる。
私が玄関に出て鍵のつまみをひねったのと、ドアの向こうの人が鍵穴に鍵を差しこんだのとは、ちょうど同時だった。
ドアが開き、「来てるな」と諏訪さんが入ってくる。
「お帰りなさい」
「どう、部屋は気に入ってもらえた?」
「はい。とても」
「キッチンとか、なにもないから、必要なものがあれば言ってくれれば買うよ」
「あ……、まだこの部屋しか拝見してないんです」
彼は廊下に上がり、ネクタイをゆるめながら「ほんと?」と眉を上げた。
「おいで、案内するよ」
「すみません」
「まずここが洗面所とバスルーム」
私の部屋の向かいにある引き戸を開け、照明のスイッチを入れる。洗面台と脱衣所と洗濯機。大きなすりガラス風のドアの奥には、たっぷりしたサイズの浴槽と、広い洗い場があった。
「こっちがトイレ。さすがにもう見た?」
廊下に戻り、次のドアを開けてくれる。マットもスリッパも置いておらず、カバー類もひとつも装着されていない、じつにシンプルで清潔感のあるトイレだ。
「いえ、はじめて拝見しました」
「律義だなあ。で、こっちがリビングとキッチン」
廊下のつきあたりのガラス戸を抜けると、明るい色調の部屋が広がっていた。ナチュラルな木目のフローリングに、アイボリーのラグとソファ。
ガラスとスチールのダイニングテーブル。入ってすぐ右手は、白い天板がまぶしいアイランドタイプのキッチンだ。
部屋の奥は一面のガラス張りで、バルコニーに出られる。ガラスに室内が反射しているのを手で遮ってよく見ると、街の明かりが見渡せる。
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