【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「早かったんですね、“勉強会”はどうでした?」
「家でまでアシスタントをしてくれる必要はない。もっと気楽にしてくれ」
「してますよ」
私は部屋着姿の自分を指さしてみせた。
チャコールグレーの裏起毛のスエットの上下。気楽さの権化みたいな恰好だ。
「お茶でもいれましょうか。ええと……これはアシスタントとしてではなく、同居人からの親切として受け取っていただければ」
諏訪さんは少し困った顔をしながらも、「じゃあ、もらおうかな」と微笑んだ。

「ハーブティって、自宅で飲むものだと思ってなかったんだが、いいな」
「眠れますしね」
リビングのソファで、諏訪さんがマグカップに口をつける。
私はダイニングテーブルで、同じハーブティを飲んでいた。カモミールとミントのティーバッグを混ぜたものだ。おいしい。
「幸せそうな顔をして飲むなあ」
気づいたらソファから彼がこちらを見ていた。慌てて姿勢を正す。
「好きなんです。味もですけど、雰囲気といいますか」
「ハーブティであるという事実が好きなんだな、きみの嗜好へのアプローチの傾向がわかってきた」
「恐縮です」
私は照れた。そうなのだ、味も好きだけれど、ハーブティという存在の、ナチュラルでありながらどこかマジカルでファンタジックなところが好きなのだ。
パッケージもたいてい花柄だから、それもいい。
「そのわりに、茶器は殺伐としたものを使ってるよな……」
「実家を出るとき、母がちゃんとしたものを持たせてくれようとしたんですが」
私の趣味は完全に母譲りだ。母は私のような半端者ではなく、TPOや生きやすさを捨ててでも生活を趣味に寄せていくタイプで、心から尊敬する。
彼女が持たせようとしたのは、イギリス製の、丸みを帯びた繊細なティーポットとカップのセットだ。
< 33 / 142 >

この作品をシェア

pagetop