【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「加盟店数がわずかに目標に達しないらしい。とはいえその目標も、当初の数値を期内に達成してしまったので、上方修正したものなんだが」
「完璧主義の刈宿さんらしいですね」
「自分じゃ無理と見るや人を頼る、あの素直さは評価する。で、これはCOOとしてというより、俺個人として手伝うわけなんだが……おいしいな、これ」
一臣さんがオムレツをスプーンで解体しながらつぶやく。
「今日はうまくできました」
「中に入ってるのは……なんだ?」
「ホワイトクリームです。ゆうべのうちに作って冷やしておいたのを、真ん中に仕込みました」
「積み重ねってすごいな」
私もそう思う。いまやオムレツだけなら、そこそこレパートリーもある。
「で、営業員のお話は……」
「そうだった」
スープをひと口飲み、彼が続けた。
「3月の残りの日数で、中小規模店舗が密集したエリアを一か所、攻め落とす」
「人海戦術ですか」
「ただの“人”じゃない。その準備に昨日までかかった」
ここのところ忙しそうにしていたのはそれか。その間、社内から上がってくる既存の仕事の話は、私が窓口となっていた。
「派遣の営業員を雇う」
私は“派遣”と書き留め「何名?」と尋ねた。
「30名」
「一度に、そんなに!?」
正規の営業員の人数を超えている。
「統括しきれます?」
「新規開拓営業のプロ集団がいるんだ。嘘みたいな話なんだが」
「それ専門で派遣される営業、ということですか?」
「そう。彼らがひとり1日で5件契約を取れば、5日間で新規750件だ」
1日5件をコンスタントに!
「可能なんでしょうか」
「それができる人たちなんだ。本当はもう少し数を集めたかったが、ほかの案件の最中とのことで、30名が限界だった」
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