【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
聞けば彼らはこうした短期集中案件を専門とし、一気に刈り取っては次の派遣先に移るらしい。まるで傭兵だ。
契約手続きをする人事担当者も、度肝を抜かれているに違いない。
「一般的な派遣会社じゃないですよね?」
「もちろん。個人的な紹介がないと契約できない」
それで“一臣さん個人として手伝う”なのか。
私は申請書に必要な情報がそろったか、メモをさらった。
「雇用期間は?」
「営業に5日、研修に1日。今月をぎりぎりまで使う。申請と承認のエビデンスが肝心だ、そこをお願いしたい」
「わかりました」
期末に予定外の予算をどっと使うのは、恣意的な利益減らしと見られかねない。急激に成長したモメントが、当局に目をつけられないよう細心の注意を払っている部分だ。
「一臣さんも、忙しくなりますね」
「うん。当分、日付が変わる前には会社を出られないと思う。なるべくきみを巻きこまないようにはするが、それも難しいかもしれない」
「よろこんでお手伝いします」
心からそう伝えた。アシスタントとして拾われて以来、彼のサポートをするのは私の大切な使命であり、楽しみでもある。
「きみが先に帰れるときは、俺を待ってなくていいよ。先に寝ていてくれ」
「はい」
慌ただしい日々が始まりそうだ。

郵便物を確認するため、週に一度は自分のマンションに帰っている。
当分そのひまがなくなりそうだったので、この日の帰り、寄ることにした。ポストには厚みのある封筒が入っていた。
母からだ。思ったとおり、中は紅茶の葉だった。母は大の紅茶好きで、ちょくちょくこうして新しい葉っぱを送ってくる。
駅まで歩く間、お礼の電話をすることにした。
『はいはい、花恋ちゃん?』
「葉っぱ受け取ったよ、ありがとう」
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