【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
私は彼のデスクから、飲みかけのプラスチックカップを引き取った。彼が頭のうしろで手を組み、ふうと息をつく。
「うん。月に一度は会って話すようにしてるんだ。そのとき、きみにも来てもらおうかなと思ってるんだが、どうかな」
「わっ、私もですか」
思わず、動揺して声がうわずった。
「いやか?」
「いえっ、いやではないです、もちろん。私もいずれ母にと思っていましたし。ただ、ちょっと緊張するなと」
「まあ、そこはお互いさまだな。というか、きみのお母さんも入れて、4人で会ってしまってもいいのかもしれない」
「4人で……」
双方片親のため、人数としては少ないけれど、二家族が集まるということだ。
完全なる顔あわせだ。
茶葉とカップを持ったまま、私はそわそわした。
「あの、でも、早くないでしょうか」
「うん?」
「当初予定では、3か月暮らしてから結婚するかどうかを決めるというお話だったはずです。でも、まだ1か月しか……」
一臣さんが手をほどき、今度はデスクの上で腕を組む。
「でも、うまくいってる」
「そうですが、今後……」
「俺は、この先の2か月も、なんの問題もなく楽しく過ごせるって確信があるよ。なにか障害にぶつかったとしても、クリアできるってね」
戸惑う私を見上げ、にこっと微笑んだ。
「きみはどう、花恋?」
かあっと頬が赤らむのを感じた。一臣さんは基本「きみ」と私を呼ぶので、名前で呼ばれる機会はあまりない。だから一回一回の衝撃が強い。
私が一臣さんと呼んでも、彼が動じたことなんて一度もないのに。
これが経験の差だろうか。
そして、私の答えなんてとうに知っているくせに、わざわざ言わせる意地悪さ。
「あの、同感です。まったく」
「同感というのは、つまり?」
ほら、これだ。
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