【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
大きな目を見開き、福原さんがじっと私を見つめたあと、にこっと笑う。
「今日の左藤さんもすてきです」
「いえ、今日はもう、いろいろと手抜きで……」
「そういうときこそ発見のチャンスじゃないですか? あっこの手順、なくても仕上がりそんなに変わらないんだ、みたいな」
つくづくコスメが好きらしい。そしておそらく根が勉強熱心なんだろう。常にきょろきょろと、研究材料を探して目が動いている。
「左藤さんは普段、お昼ってどうしてるんですか」
「そうですね……買ってきて食べたり、外で簡単に済ませたりが多いです」
「諏訪さんとランチをするわけではないんですか?」
なにかバレたのかと、ついぎくっとしてしまった。福原さんは純粋な興味で聞いただけのようで、きょとんとして返事を待っている。
チーズケーキと、ふたつのティーポットが運ばれてきた。いい香りがする。
「外出中などは、そうするときもありますが、普段はあまりしませんね」
「えー、あんなボスがいたら、私なら毎日たかっちゃいます。諏訪さんて気前いいですよね。年末、プレスカンファレンスの準備で徹夜になることが決まったとき、彼が私たちに差し入れを用意するって言ってくれたんですよ」
「はい」
「そしたらグルメ情報にくわしい子が、すっごい高いショコラティエのチョコがいいって言ったんです。ほら、百貨店にガラス張りのブティックが入ってるお店」
「わかります」
私も手土産に利用することがある。買える場所が非常に限られているので、相手が甘いもの好きであれば、これを贈っておけば間違いなく喜ばれる。
「そしたら、本当に買ってきてくれちゃったんです。もう、すごい量を。リクエストした子も、半分冗談だったんで、恐縮しちゃって」
「彼らしいですね」
「気前のいい人なんだなあって感動しました」
私はその買い物を言付かった記憶はない。きっとがんばってくれている広報部のために、彼自らが買いに行ったのだ。
気前がいいというより、個人的な損得に無頓着なんだろうと思う。自分の手間や労力を、無駄に惜しむことをしない。彼が一番手があいているのなら、彼が行く。
その代わり、彼が動くべきじゃない場合は、平然と人をこき使う。
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