【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
ケーキを頬張り、福原さんが「デリシャス」とつぶやいた。
「正直、あんな“ザ・エグゼクティブ”って感じの人になると思わなかったです。普通に、仲間とワイワイ仕事してる人ってイメージだったんで」
「あっ、そうか福原さん、パスウェイご出身でしたね」
「そうなんですよ」
合併前に一臣さんがいた会社だ。
「小さい会社なんで、管理部門も開発も、ひとまとめに同じフロアで。仕事でのやりとりはほとんどないんですけど、見かけることは多かったです。目立ちますもんね、諏訪さん」
「当時からそうでした?」
「ええ。いずれトップになるとか、その前に絶対大手に引き抜かれるとか、いろいろ噂があって。吸収合併のときも、目的は彼と彼のプロジェクトなのは露骨でしたもんね」
内部から見ていてもそうだったのか。
「でも、なんでモメントでそのプロジェクトを担当してないんでしょうね?」
「さあ……」
私はもう一方の、吸収した側の会社にいた。だけどいかんせん入社直後に合併騒動が起こったため、なにがなんだかわからなかった。
「まだ各部署で研修しているころで、本配属すらされてなくて」
「てことは左藤さんて、もしかして私より年下ですね?」
「えっ」
そういえばそうだ。
「……福原さん、おいくつですか? 私は28です」
「ちょうど30なんですよー、これが」
本当に年上だった。言えないけれど、もしかしたら私より下かも、なんて思っていたくらいなのに。熱烈な趣味は、人を若く保つんだろうか。
福原さんが紅茶をカップに注いだ。華やかな甘い香りが湯気と一緒にふわっと広がる。
「どうですか、30代って」
「なっちゃうと楽ですね。29のほうがあれこれ言われて面倒だったかな。すべりこみで結婚するなら今だねとか」
「正直、あんな“ザ・エグゼクティブ”って感じの人になると思わなかったです。普通に、仲間とワイワイ仕事してる人ってイメージだったんで」
「あっ、そうか福原さん、パスウェイご出身でしたね」
「そうなんですよ」
合併前に一臣さんがいた会社だ。
「小さい会社なんで、管理部門も開発も、ひとまとめに同じフロアで。仕事でのやりとりはほとんどないんですけど、見かけることは多かったです。目立ちますもんね、諏訪さん」
「当時からそうでした?」
「ええ。いずれトップになるとか、その前に絶対大手に引き抜かれるとか、いろいろ噂があって。吸収合併のときも、目的は彼と彼のプロジェクトなのは露骨でしたもんね」
内部から見ていてもそうだったのか。
「でも、なんでモメントでそのプロジェクトを担当してないんでしょうね?」
「さあ……」
私はもう一方の、吸収した側の会社にいた。だけどいかんせん入社直後に合併騒動が起こったため、なにがなんだかわからなかった。
「まだ各部署で研修しているころで、本配属すらされてなくて」
「てことは左藤さんて、もしかして私より年下ですね?」
「えっ」
そういえばそうだ。
「……福原さん、おいくつですか? 私は28です」
「ちょうど30なんですよー、これが」
本当に年上だった。言えないけれど、もしかしたら私より下かも、なんて思っていたくらいなのに。熱烈な趣味は、人を若く保つんだろうか。
福原さんが紅茶をカップに注いだ。華やかな甘い香りが湯気と一緒にふわっと広がる。
「どうですか、30代って」
「なっちゃうと楽ですね。29のほうがあれこれ言われて面倒だったかな。すべりこみで結婚するなら今だねとか」