【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「刈宿さんみたいです」
言った瞬間、しまったと思った。一臣さんの顔に浮かんでいたいたずらっぽい笑みがさっと消え、子どもっぽい不満丸出しの表情になる。
「……まさか、こういうたぐいのことを」
「言われてないです。イメージのお話です。すみません、失言でした」
「つくづく頭にくるな、あの男は!」
「言われてないですって……」
容赦なく嫌悪をあらわにする彼を、無駄と知りつつなだめる。なんだってこんなに馬の合わないふたりが、そろって会社の要職についてしまったのか。
ふいに一臣さんが口を閉じ、静かな視線をこちらに向けた。
「なにか言いたいことがあるんじゃないのか」
「え……」
打って変わって、まなざしは穏やかだ。どきっとした。
「どうしてそう思います?」
「さあ。でもわかる。帰ってきたときから、ちょっと変だった」
目をそらそうとしたのだけれど、できなかった。彼に対して、先に視線をはずす習慣ができていないのかもしれない。
代わりに、唇が震えだした。
「……このマンションを、出ていこうと思います」
視界がにじんでくる。
じっと私を見つめる彼の瞳が、わずかに驚きの色を見せた気がした。
「これ以上、母につらい思いをさせるのは耐えられません。私がここにいるかぎり、母は私のために、お父さまを許そうとするでしょう」
いっそ、どうしても結婚したいから許してと母に言えるくらいの強い気持ちがあればよかった。そう言えないのが私の半端さだ。
情けなくて、涙が頬を伝った。
「ごめんなさい、一臣さん」
背もたれにかけられていた腕が、私の肩を抱いた。額と額を合わせるように、一臣さんが顔を寄せて、優しい声を出す。
言った瞬間、しまったと思った。一臣さんの顔に浮かんでいたいたずらっぽい笑みがさっと消え、子どもっぽい不満丸出しの表情になる。
「……まさか、こういうたぐいのことを」
「言われてないです。イメージのお話です。すみません、失言でした」
「つくづく頭にくるな、あの男は!」
「言われてないですって……」
容赦なく嫌悪をあらわにする彼を、無駄と知りつつなだめる。なんだってこんなに馬の合わないふたりが、そろって会社の要職についてしまったのか。
ふいに一臣さんが口を閉じ、静かな視線をこちらに向けた。
「なにか言いたいことがあるんじゃないのか」
「え……」
打って変わって、まなざしは穏やかだ。どきっとした。
「どうしてそう思います?」
「さあ。でもわかる。帰ってきたときから、ちょっと変だった」
目をそらそうとしたのだけれど、できなかった。彼に対して、先に視線をはずす習慣ができていないのかもしれない。
代わりに、唇が震えだした。
「……このマンションを、出ていこうと思います」
視界がにじんでくる。
じっと私を見つめる彼の瞳が、わずかに驚きの色を見せた気がした。
「これ以上、母につらい思いをさせるのは耐えられません。私がここにいるかぎり、母は私のために、お父さまを許そうとするでしょう」
いっそ、どうしても結婚したいから許してと母に言えるくらいの強い気持ちがあればよかった。そう言えないのが私の半端さだ。
情けなくて、涙が頬を伝った。
「ごめんなさい、一臣さん」
背もたれにかけられていた腕が、私の肩を抱いた。額と額を合わせるように、一臣さんが顔を寄せて、優しい声を出す。