【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「これまで貢献してくれたエンジニアたちも、可能なかぎり希望に沿って一緒に異動させられたらと思ってる」
「きっと、喜びますね」
「前にも言ったな、そのときは、きみもつれていく」
あのときとは、私たちをとりまく事情が違う。
それでも私でいいんですか。
そばに置く人間に、私を選んでくれるんですか。
「……はい」
「意外と涙もろいんだな、花恋」
笑われながら、眼鏡と顔の隙間から指を突っこんで、にじんできた涙を拭った。
はい、つれていってください。
あなたが望んでくださるかぎり、私はあなたのそばにいたいです。
──しかしながら、ことはそう美しくは運ばないのだった。
連休も目前に迫ったある日、廊下で福原さんに呼び止められた。
「こんにちは! 今日もいい色のチークですね。偏光ラメ美しい!」
姿勢を変えて上下左右から私の頬を眺め回す。カメラマンみたいだ。
「なぜ福原さんはそういうお仕事に就かなかったんですか?」
「コスメ関係ってことですか? 考えなくもなかったんですけど、メーカーもBAも女の園で、私には合わなそうだなと思ったんで」
「コミュニケーション能力、高そうにお見受けしますが……」
「好きでもない相手に発揮するほど余ってないんですよね」
ああ……、わかるかもしれない。
並んで廊下を歩く彼女は、ブックレットのようなものを抱えている。そのうちのひとつが会社案内であることに気づいた。
まだ年が変わる前、一臣さんが広報部から頼まれ、COOとしてのコメントを書いていた。見本を私も見ている。
「もしかして、新人研修ですか」
「あっ、よくおわかりに! はい。テックの説明をしに本体に行ってました」
テックでは独自に新卒採用はしない。本体でまとめて採用し、研修を行い、その後の配属先として、テックやほかのグループ会社が受け入れをする。
「きっと、喜びますね」
「前にも言ったな、そのときは、きみもつれていく」
あのときとは、私たちをとりまく事情が違う。
それでも私でいいんですか。
そばに置く人間に、私を選んでくれるんですか。
「……はい」
「意外と涙もろいんだな、花恋」
笑われながら、眼鏡と顔の隙間から指を突っこんで、にじんできた涙を拭った。
はい、つれていってください。
あなたが望んでくださるかぎり、私はあなたのそばにいたいです。
──しかしながら、ことはそう美しくは運ばないのだった。
連休も目前に迫ったある日、廊下で福原さんに呼び止められた。
「こんにちは! 今日もいい色のチークですね。偏光ラメ美しい!」
姿勢を変えて上下左右から私の頬を眺め回す。カメラマンみたいだ。
「なぜ福原さんはそういうお仕事に就かなかったんですか?」
「コスメ関係ってことですか? 考えなくもなかったんですけど、メーカーもBAも女の園で、私には合わなそうだなと思ったんで」
「コミュニケーション能力、高そうにお見受けしますが……」
「好きでもない相手に発揮するほど余ってないんですよね」
ああ……、わかるかもしれない。
並んで廊下を歩く彼女は、ブックレットのようなものを抱えている。そのうちのひとつが会社案内であることに気づいた。
まだ年が変わる前、一臣さんが広報部から頼まれ、COOとしてのコメントを書いていた。見本を私も見ている。
「もしかして、新人研修ですか」
「あっ、よくおわかりに! はい。テックの説明をしに本体に行ってました」
テックでは独自に新卒採用はしない。本体でまとめて採用し、研修を行い、その後の配属先として、テックやほかのグループ会社が受け入れをする。