【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
こちらへ歩いてきた彼は、ドアの前の私のそばで振り返り、手を広げる。
「道なんて興味はないよ。ぼくが手に入れたかったのは、点だ。ポジションだよ。きみが手に入れるはずだった席、それだけだ! そして……」
だしぬけに肩を抱き寄せられ、私は声をあげそうになった。
「彼女ももらうつもりだ。本体につれていくのがきみの本望だったんだろう? 代わりにぼくが実現してあげるよ」
テーブルに置かれた一臣さんの手が、ぐっと握りこまれ、関節が白く浮き出る。
にやりと満足そうな笑みを浮かべると、するりと私から手を離し、刈宿さんは出ていった。
「……一臣さん」
「巻きこんですまない。きみはつれていかせない、絶対に」
テーブルをにらみつけたまま、早口に彼が言う。
常になく感情的なその様子が心配になり、私は彼のそばへ近寄った。腕に手を置くと、はっと我に返ったように、普段の表情が戻ってくる。
「あ……、もちろん、きみが行きたいなら、別だが」
「一臣さんを残して、行きたいわけがありません」
少しぽかんとしてから、一臣さんは力なく微笑んだ。
「……なにがあったんですか」
「くだらない話だ。彼がグループの上層部に、自分を売りこんだんだよ。年度末の刈り取りをはじめ、他人の功績を自分のもののように語ってね」
「あれは、刈宿さんの頼みで一臣さんが采配したものじゃないですか」
「最初からこういうつもりだったんだろう。俺に頼む判断をしたのは彼だ。広い意味ではぎりぎり彼の手柄と言えなくもない。あの男はそういう、驚くほどストレートなずる賢い手を、ためらいなく使う」
そりが合わない、なんてのんきな関係ではなかった。
一臣さんは刈宿さんのそういう部分を見抜いていて、絶対に共鳴し得ない相手として警戒していたのだ。
そんな相手と、私は……。
「申し訳ありません……」
手が震え、彼のスーツの袖をぎゅっとつかんだ。
「なぜきみが謝る?」
「私がなにか、軽はずみなことを言ったのかもしれません。言ってなくても、態度に出ていたと思います。浮かれて、格好まで変えたりして、私……」
「道なんて興味はないよ。ぼくが手に入れたかったのは、点だ。ポジションだよ。きみが手に入れるはずだった席、それだけだ! そして……」
だしぬけに肩を抱き寄せられ、私は声をあげそうになった。
「彼女ももらうつもりだ。本体につれていくのがきみの本望だったんだろう? 代わりにぼくが実現してあげるよ」
テーブルに置かれた一臣さんの手が、ぐっと握りこまれ、関節が白く浮き出る。
にやりと満足そうな笑みを浮かべると、するりと私から手を離し、刈宿さんは出ていった。
「……一臣さん」
「巻きこんですまない。きみはつれていかせない、絶対に」
テーブルをにらみつけたまま、早口に彼が言う。
常になく感情的なその様子が心配になり、私は彼のそばへ近寄った。腕に手を置くと、はっと我に返ったように、普段の表情が戻ってくる。
「あ……、もちろん、きみが行きたいなら、別だが」
「一臣さんを残して、行きたいわけがありません」
少しぽかんとしてから、一臣さんは力なく微笑んだ。
「……なにがあったんですか」
「くだらない話だ。彼がグループの上層部に、自分を売りこんだんだよ。年度末の刈り取りをはじめ、他人の功績を自分のもののように語ってね」
「あれは、刈宿さんの頼みで一臣さんが采配したものじゃないですか」
「最初からこういうつもりだったんだろう。俺に頼む判断をしたのは彼だ。広い意味ではぎりぎり彼の手柄と言えなくもない。あの男はそういう、驚くほどストレートなずる賢い手を、ためらいなく使う」
そりが合わない、なんてのんきな関係ではなかった。
一臣さんは刈宿さんのそういう部分を見抜いていて、絶対に共鳴し得ない相手として警戒していたのだ。
そんな相手と、私は……。
「申し訳ありません……」
手が震え、彼のスーツの袖をぎゅっとつかんだ。
「なぜきみが謝る?」
「私がなにか、軽はずみなことを言ったのかもしれません。言ってなくても、態度に出ていたと思います。浮かれて、格好まで変えたりして、私……」