【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
微妙な立場にあるとはいえ、目の前の仕事が減るわけじゃない。社内の打ち合わせもある。刈宿さんと同席することもある。
そうすると好奇の視線を隠しきれない社員も出てくる。刈宿さんはああいう人なので、自分が今楽しんでいることを表に出してはばからない。
一臣さんは動じず、いつもどおりに仕事をしている。
だけど席に戻ってひとりになると、あんなふうにじっと押し黙って、何事かをずっと考えている。
私はなんと声をかけたらいいのかすらわからない。
スマホをコツコツと顎にあて、宙を見つめていた一臣さんが、私の質問にきょろっと視線を動かした。
今日は眼鏡だ。軽い近視の彼は、睡眠時間が足りないとコンタクトレンズがきついと言って眼鏡になる。
以前からたまにあることだけれど、今はただ心配が増す。
「いや、本体の役員にも、まだ俺を評価してくれている人はいるんだが」
「そんなの当然です」
つい食ってかかるような口調になり、一臣さんをきょとんとさせてしまった。
「あっ……、失礼しました。ええと、その方と連絡をお取りになったんですか」
「ちょっと気になってたことがあって、問い合わせてたんだ。その返事だった」
「気になってたこと、とは」
一臣さんはスマホをデスクに置き、椅子の背に寄りかかった。
腕組みし、まだなにか考えごとを続けているような調子で口を開く。
「俺はパスウェイが吸収されたとき、引き続き本体でコアプラザの開発に携わる予定だった。契約書こそ交わしていないが、その約束で来たんだ」
「やっぱりそうだったんですね」
コアプラザ欲しさに合併したのに、その原案者である彼が開発に携わっていないのは、どうも妙だと思っていた。
「だが、はずされた。今確認したんだが、やはりそれにも、あの人がかかわっていたみたいだな」
「刈宿さんが……?」
彼がうなずく。
「俺がパスウェイ在籍中にも、ほかのコンテンツの立ち上げに手をつけてたこと、パスウェイ内でも役員候補だったことなんかを、あしざまにアピールしたらしい」
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