「悪」が似合わない君と。


トンボと別れた後


その日も倉庫裏に集まってた

いつも通りうるさい奴らに囲まれて


「彗、どこ行ってたんだ。あの三年のやつらお前のこと探してたぞ」


俺のことを彗と呼ぶのはカイだけだ


樋口海


俺とつるんでるやつの中でもしっかりしてて頼りになる兄貴みたいなタイプ

常に表情が変わらない静かなやつだが怒るとかなりヤバイ

で、一応俺の幼馴染だ


俺がこんな風になる前から一緒だった

まぁ俺が流されたのはこいつのせいなんだけどな

最初にグレ始めたのはこいつだからな


まあ今となっちゃどうでもいいんだが


いつもの場所

いつもの光景

変わりのない感情…


その時だった


「ああ!」


急に女の声が響く

思わず声のする方を見ると


ん?


あのでかいダサい眼鏡…


「トンボ?」


間違いないトンボだ

ってかなんでここに?


「なんだよトンボ、ストーカー?」


まあ別に面白いからいいんだけど


「ち、違います!偶然です!ぐ・う・ぜ・ん」


でかいダサい眼鏡をかけてて顔がほとんどわからない


「てか、本当にトンボになってるね」


まじでトンボみたい

するとまたほっぺを膨らませて怒るトンボ

俺の体を指差して怒鳴り始める


「っていうか!人のこと言えませんよね!アンタだってその服ダサい!
なんでせっかくの制服というブランドをそんな着方しちゃうんですか!」


ほぉ、こんな言い方されるの久しぶりだ


なるほどね、制服というブランドか

でもしっかり着ると動きづらいんだよな


「うーん、楽だからかな?喧嘩とかするのに」


こいつは俺が龍堂慧って分かってて言ってんのか?

喧嘩という言葉にぽかんとしてる

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