「悪」が似合わない君と。


「人のことブス呼ばわりする前に鏡見たらどうですかね?相当ひどいですよ色々と」


え?

トンボが浜田に向かって反論した

意外だった


浜田はどう見てもガタイも顔もかなりいかつい

普通だったらこんな奴にあんなこと言われたら怯えるだろ


だけどトンボは違う


「何をかっこいいと思ってんのか知りませんがその痛々しいファッションなんとかしたらどうですか?」

そういえばさっきこいつ俺にも制服のこと言ってたな

「正しくないことしてる自分達をかっこいいと自惚れてるだけだと思うけどね
人から恐れられてそれを心地よく思ってるだけだと思うけど」


トンボは細い体でズンズンと浜田に迫っていく


でも俺がからかった時とは全然違う顔をしていた

目は強く凛々と光ってる眼鏡越しでもわかる

声だって強く突き刺さる


正しい、正しくない

そんなこと考えたことあったっけ


人から恐れられる事を心地よく


…なるほど

確かに周りから見たら俺らはそんなバカの集まりかもな


だけど

今の自分を捨てられないのはなんでだろう


「正しく生きることよりかっこいい、正しくないことなんてない!」


…っ


正しく生きる…ってなんだっけ


…脳内をよぎる過去の自分と母親の顔



…いや、気のせいだよな


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