「悪」が似合わない君と。
…
「行ったな」
行っちゃったよ
というかこの体制がきついです
心臓がやばいです
爆発です
「りゅ、リュードーさん…あの」
「ん?…あ」
耳まで赤くなった私を見て察したのか、手を離してくれた
「…なんで隠れたんですか」
「んー、あいつらが邪魔だったから」
なんですかそれ
でも…リュードーさんと二人きりに慣れたのが思いの外嬉しくて…にやけちゃいそうだ
「…トンボさ…もう大丈夫か?」
「え?」
「いや、この前の事件、背中も怪我してたし…なんか…しっかり言えてなかったと思って」
あ…夏兄さんの…
「巻き込んでごめん、怪我させてほんと…」
リュードーさん…
「前も言いましたが巻き込んだのは私の方ですよ。
それと…助けに来てくれて本当にありがとうございました」
「トンボ…」
向き合うように座り直して言った私の頬を、リュードーさんの指が撫でた
やばい…
落ち着いたはずの心臓がまた暴れ始める
「良くは、ないけど…怪我したのが顔じゃなくて良かった」
頬に沿っていた指が眼鏡にかかった
視界が少しクリアになる
眼鏡を外されたんだ
「なんでかな」
?
「いやなんだよな…ミスコン」
へ?
「リュードーさん?」
「…いや、なんでもない」
スッと離れる暖かな手
「帰るか」
「…そうですね」
ちょっと虚しいな、なんて…
「トンボ?」
「はーい」
当然のように隣に並ぶのを待たれると少し照れくさい
少しだけいつもよりゆっくり帰り道を歩いた