「悪」が似合わない君と。


この恋も、ステージも


負けられない!



本気で行こう


リュードーさん!


私を見て!!



武内くんとすれ違う


「がんばれ」


そんな声が聞こえた


ふっと笑って一歩を踏み出す



流れる音楽に乗せてテンポよく足を出す


久しぶりのモデルウォーク


当たる照明が気持ちいい


「や…ば」


誰かの声が聞こえたけど


周りなんて見えない


ただ前だけを見る


カンカンと音を立てるヒールと音楽しか聞こえない


リュードーさん、見てますか?


これが私の本気です


届け!


ひたすら前に向かって歩き続ける


そして

足を止め片足に重心を預けるだけのポーズ


照明で観客の顔はしっかり見えない


でも見えようが見えまいが関係ない


このステージはオーディエンスのためじゃなく


私のためのステージなんだ!




顔を残して振り返る


最後まで気を抜かない


私のステージは終わらない


観客が何か言ってるけど聞こえない


私の耳に私の目にはなにも入らない


ただ前だけを見る


そしてステージから消える


その瞬間魔法が解けたように雑音が流れ込んできた




「やっば!なに今の子!!」

「なにあれーイキってんじゃん」

「やばいやばい!まじでかっこいい!」

「ガチのモデルじゃん!!」

「ウォーキングうますぎ!」

「シンプルだったのに一番目立ってたね」


いろんな感想が聞こえた

でも正直周りの目はどうでもいい

ただ…びっくりするくらい楽しかった


やっぱり私はモデルをやりたい

ハナでいたい

好きなんだ…ここにいるのが


この世界が私の居場所なんだ



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