「悪」が似合わない君と。


え、どういうこと?

ハナだって知ってるってこと?


「りゅ、リュードーさん、知ってたんですか?」

「ああ、結構前から」


ウッソでしょ?


「で、でもなんで」

「だからコンビニでたまたま見かけた雑誌の表紙が見た顔だなーって思って、そしたらお前だった」

「え、なんで分かったんですか?顔だいぶ違いますよね」

「わかるに決まってんだろ、お前のことくらい」





「でも…全然顔違うし」

「確かに顔は違うけどお前はお前だ」


え、うっそ、そんな簡単にわかるもの?

でも…今まで深く関わった人にだってバレたことないのに?


「どんなんであれ、お前がお前なことに変わりないだろ?」


…っ!!


リュードーさんは…何気なく言っただけの言葉かもしれない


でも、私には…

充分だった


ハナはハナで

私は私


そう思って生きてきた


逃げ道だった

ハナは辛くなったときに自分に嘘をつくための逃げ道


でもリュードーさんは…


「ハナって名前でやってるのかもしんねぇけど、俺にとっちゃどっちもトンボだ」


「リュードーさん…」


あなたはそんなつもりはないのかもしれないけど…


私にはあなたの言葉が

どっちの私も受け入れてくれると言っているように聞こえた


「リュードーさんは…私も…ハナも…受け入れてくれますか?」


……



はっ!!

私なに言って!


なんか感情的になって口走ってしまった…


「すすすすみません!忘れてくだ…」


「受け入れるに決まってんだろ」


!!


「お前にとってそのモデルのハナってやつがどんな存在かは知らないけど、
俺にとってはどっちもトンボだから受け入れないわけにはいかない」




リュードーさん…


ああ…ほんとにこの人には敵わない


…好きすぎて辛い


「おいトン…ぼ」





「え、おま!え!?なんで泣いてんだよ!」


「あああっ!す、すみませんすみません!見ないでくださいぃぃ!」


「…トンボ」


わ!!その場から逃げようとした私の腕は掴まれた



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