「悪」が似合わない君と。



「り、リュードーさん?」

そのまま引き寄せられた私はリュードーさんの腕の中にすっぽりだった

幸い人通りの少ない廊下だったけど

こ、これははずかしい


「トンボ、とりあえず泣きやめ」

「は、はい!!」


とまるぇぇぇ

止まるんだ涙ああああ





あったかいな


本日二度目のリュードーさんの腕の中


「落ち着いたか?」


落ち着いた…けど、もう少しこうしていたい

その気持ちを抑えてうなずく


「そーか」


でもリュードーさんはそう答えただけで私を離さなかった


「リュードーさん?」


「なに?」


いや、なにやのうて

私ら呼び込み行かんあかんで


「ちょっとサボらない?」



「いい…ですよ」


あああ


私悪い子


「楽しいか?」


「え?」


「その、モデルの仕事」


そりゃ


「当然です」


「そうか」


「…私の誇りです」


モデルの仕事をしてなかったらきっとずっと自分に自信が持てなかった

境遇はどうであれ、私はこの仕事を始めてよかったと思ってる


「ミスコン見てさ、俺もそう思ったよ。スッゲェ輝いてたから」


「…リュードーさん」


「めちゃくちゃ魅力的だった」


「ふふ…リュードーさん、照れます」


「素直だな」


私たちは廊下の真ん中でハグしながらクスクスと笑った


この時間がいつまでも続けばいいのに


なんて思ってしまう


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