「悪」が似合わない君と。
薄暗い路地裏で狭い傘にぎゅうぎゅうと入り、雨に降られる私と彗
「そういえばさ、あの日も雨だったな」
「…そうだね」
「あの猫、元気かな」
「きっと元気だよ」
「そうだな」
サアーっと雨の音が静かに傘を叩く
「ねえ知ってる?」
「ん?」
「人間の声が一番綺麗に聞こえるのって雨の日の傘の中なんだよ」
「そうなのか」
「うん、だからね。今の私の美声で言ってあげましょう」
「ん?」
「好きだよ」
「…お」
「いい声?」
「うん、いい声」
「でしょ?」
「…俺もだよ」
「…うん、いい声」
「……ふふふ」
隣で彼が笑いをこぼした
「何笑ってんの?」
「んー、幸せだなーって」
end