「悪」が似合わない君と。


『おい、トンボ』

『…』

『おいって』

『…』

『なーあー』

『もう!なんなんですか!』


先生とか他の生徒は不自然なほど静かだし

明らかに気まずそうにしている


だから嫌だったんだよーこの人と関わるのはー


『この問題やり方違うぞ』

『え?』


ま、また?

でも…よくわからない

なにが違うんだ?


『わかんないの?』

『…う、うぅ』


リュードーの野郎はクスッと笑った


『…ここだよ』

え?

『ここ、符号、変えないとできない
公式に当てはめるだけじゃダメだよ』


え?




『…ほんとだ…』

『この公式使うときはこうやって…』


わ、わかりやしぃ

なんだこのスーパーティーチャーは


『で、できた!!』


静かな教室で私達の声だけが響いてることを忘れて思わず声を出してしまった

にもかかわらず誰もこっちを見ようとしない

気まずい空気が延長しているだけだ


それにしてもわかりやすい

こんなにも簡単に解けるとは!

その次の問題も…


『あ、解けた、解けたよ!』


思わず顔を上げて隣を見る

すると


『ん』


頬杖をつき、柔らかく微笑みながら私を見ていたリュードーさんと目があった




ドキ




ん?


『ドキ』?


なんだなんだ

この新たな効果音は


『トンボ』

『な、なんですか?』


気まずくて目をそらした私に声をかけた


『感謝しろよ』



『私の実力ですぅー』


ベェ〜と威嚇して、でも、まあ、確かにリュードーさんのおかげと言うことで


『あ、ありがとうございます』


ぶっきらぼうに言ってやった


『ハハ、素直じゃないやつ』




この時のリュードーさんがどんな顔をしていたかはわからない


見ようと思えば見ることもできた

でも…見たらいけないような


なんだか…後戻りできなくなる気持ちになるような


そんな気がした


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