「悪」が似合わない君と。
ーー
父親は物心ついた時から家にはいなかった
母親曰く俺が生まれる前に家を出たらしい
それも、ストレスが溜まると母親に暴力を振るって当たっていたという飛んだクソ野郎らしい
母親は女手一つで俺を育て俺が小学校に上がる頃病気で倒れた
病院通いで高学年になる頃にはずっと入院していた
それは今でも続いている
中学に上がる頃、よくつるんでた奴が変な方向へ傾いた
酒、タバコ、喧嘩、授業はまともに受けない
いわゆる不良
精神的に弱ってた俺は簡単に流された
それまで週一で通っていた母親のもとにも行かなくなった
ある時大きな喧嘩があった
俺は殴り合いの喧嘩なんてしたことない
仲間がよくやっているのを眺めてはいたが
俺自身は暴力を振るうことも振るわれることもなかった
でもその時の喧嘩には巻き込まれた
やり方なんてわからない
ただ見様見真似で殴るだけ
そりゃ最初は抵抗があった
でも、俺は負けなかった
何故だか、負けられない気がした
くそ野郎の父親と同じことをしている自分が憎かった
でもその父親のことを考えるとさらに負けられない気がした
病院で眠っている母親の顔がよぎる
俺の家族を傷つけた俺の家族と、そいつと同じことをしている俺
ああ、俺も飛んだくそ野郎だ
まあいい、なんとでもなれ