「悪」が似合わない君と。



「ありがとうです!お陰で助かりました!ありがとう!!」




……変わってない


こいつはずっと変わってない


いや……変わったか

前よりもずっと綺麗になってる


でも

ヘラっと馬鹿みたいに笑って

本当に妖精みたいに可愛らしく、柔らかく微笑む姿は

俺の脳内に染み付いてるあいつとおんなじだった


今まで何度謝られたか恐れられたか分からない


そんな俺にコイツは簡単に笑顔を向ける



「ありがとう」また聞けたこいつの言葉



「あの、聞いてもいいですかね?トンボってなんですかね?」


俺が自分の世界に入っていると再び俺の顔を見るそいつ


「さっき言ったじゃないですか、おトンボ…あ、いや、トンボって」


ああ、トンボ


ってかそんなことよりコイツは俺のことどう思ってるんだ?


自分で言うのもなんだけど有名な方だ

悪い意味で…

前会った時よりも高名になっているはずだが


コイツはぽけっとした顔で俺を見ている

ただの同級生みたいに

その顔が面白くて、ついからかってみたくなる


俺はトンボ眼鏡との距離を縮めた


「ダッセェメガネかけてたからさ」


瞬間わかりやすく歪む顔


「な、なんだとぉぉぉ!?」


バタバタと暴れるそいつ

それが面白くって思わず笑みがこぼれる


「こらトンボ、羽ばたつかせるな」

「トンボじゃないもん!!」


こんなに笑ったのはいつぶりだろう


こんなにも気分がいいものだったんだな


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