庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「どうしてあんな胡散臭そうな人と結婚なんて。何か弱味でも握られたんですか?」
眉を下げ早口でそう言う影山くんに「違うの」と、慌てて否定する。
「彼とは元々地元の幼馴染で、最近偶然再会して、それで」
「だからっていきなり結婚ですか?」
「まぁ色々と事情があって」
そう言うと景山くんは「ふ~ん」と言って、それ以上はなにも言わなかった。もっとあれこれ聞いてくるかと思ったけど、会社までの道にりはいたって普通だった。
昨日のテレビ番組がどうのとか、はまっているスポーツがどうのとか、他愛もない話をしていた。
◇
会社に戻ると、エントランスの受付に立つ男女の背中が目に留まった。スラット背の高い男性は千晃くんだとすぐに分かった。
その隣には栗色のロングヘアーを一つに縛り、華奢なヒールのパンプスを履いている女性がいた。後ろ姿すらも美しくて、その女性が昨日プレゼン会議にいた人だと直感した。
二人の姿を目で追いながらゲートを通り、エレベーターホールに向かっていると、千晃くんたちもこっちに向かってくるのが見えた。