庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
きっと昨日の案件が本決まりしたんだろう。そう思うと今すぐ傍に駆けつけておめでとうと言いたい気持ちになる。だけどそんなことここでできるはずがなく、ぐっと堪える。
千晃くんたちとほぼ同時にエレベーター前に着き、白々しいと思いつつ小さく会釈をする。隣にいた景山くんはじっと千晃くんの顔を見ていてちょっとハラハラしたけど、すぐに礼儀正しく頭を下げていた。
しかもエレベーターが到着すると一番最初に中へと入り、ドアを開けて来客者の二人を迎え入れていた。いつも生意気なことばかり言っているくせに、こういうところは感心してしまう。
必然的に中は4人になり、なんとなく気まずい空気が流れる。
ここはなにか話すべき? いや、やめよう。千晃くんと私が婚約していることを、もしかしたらそっちの女性はまだ知らないかもしれないわけだし。それに景山くんは千晃くんのことを知ってしまったけど、そのことを千晃くんは知らない。私もその女性が誰なのかよくわかっていないから、迂闊なことは言えない。
妙な相関図をそれぞれが察したように、みんな終始無言だった。