庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
 
 エレベーターを先に降りたのは私達の方だった。

 開くボタンを押してくれていた千晃くんに会釈しながら、景山くんと一緒にその場を後にする。すると景山くんが思わぬことを言いだした。

「やっぱり嫌味な人だなぁ。背は高いし顔は整っているし、いちいちエレガントだし」

 課に向かいながら愚痴のようにこぼす。

 景山くんみたいに見た目だけしか知らない人は、嫌味だと思うかもしれない。

 だけど人に恨まれたり、敵を作るようなタイプではない。むしろ友達も多い方だった。それはきっと物腰が柔らかくて、ひけらかしたりしない人柄のせいだろう。

「千晃くん、地元ではちょっとした有名人だったんだよ」

 きっと地元では私たちの結婚のこと、噂になっているだろうな。

「えー? 小原さん、自分の旦那さんを君付けで呼んでいるんですか? なんかエロいっすねー」
「だ、だって昔からの癖で」
「いいなぁ。俺は智久だから、ともくんって呼んでほしいなぁ」

 あまりにも真面目な顔で言うからおかしくなって、ぷっと吹き出してしまった。そんな私を見て景山くんが、ムッと眉根を寄せいている。

「まぁどうせ俺にはそんな日は訪れないでしょうけど」

 しかも今度は拗ね始めた。なんだか大きな子供みたいだ。


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