庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
定時を迎え、課を後にする。今日は帰っても一人。夕飯は何にしようかなと考えていると、トイレから出てきた人と出会い頭にぶつかりそうになった。慌てて「すみません」と言って後ずさる。
「いえ、こちらこそ」
そこには少し驚いたように目を丸くする女性がいて、その顔を見て思わず「あっ」と呟いてしまった。その人はさっき一緒にエレベーターに乗った、千晃くんの会社の人だったのだ。
彼女も私に気が付いたようで、綺麗に笑ってぺこっと頭を下げた。
ハーフのように目鼻立ちがはっきりしていて、CMに出ていそうなサラサラのロングヘアー。私より5センチ以上高い身長で、品が内側から滲み出ている。同じ女性なのに、まるで別の人種のように感じる。
「確か千晃さんの婚約者さん、でしたよね?」
ぼんやりと観察していると女性が口を開いた。しかもその言葉に驚いた。私たちのこと、知っていたんだ。
「あ、はい。いつもお世話になっています」
慌てて挨拶する。
「こちらこそ。私、三条るり子と言います。千晃さんの会社で経理を担当しています」
「小原椎花と申します」
そう答えると、三条さんの口元が綺麗な弧を描いた。