庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「あなたにお話したいことがあったからよかった」
「え? 私にですか?」

 いったいなんの話があるというのだろう? ほぼ初対面なのに。不思議に思っていると、綺麗な口元からは想像できないような言葉が飛び出した。

「時間がないから率直に言うけど、千晃さんとの結婚、やめてくれないかしら?」

 さっきまでとは打って変わって冷たい声色に、背筋が寒くなるのを感じた。

 やめてほしいって、いったいどういうこと? もしかしてこの人、千晃くんのことが?

 しかも冷たい口調とは裏腹に、ずっとニコニコと笑みを崩さないから、それが逆に不気味に思えた。

「え、あの……それって」

 軽くパニック状態でうまく口がまわらない。喉の奥が乾いていくのを感じる。

「そもそも彼がどうしてあなたと結婚することにしたのか、理由を知っている?」
「えっ?」

 まるで本当の理由があるかの言い方に、心臓がばくばくし始める。いったいどういうこと? 
 もし理由があるとしたら、どうして彼女がそれを知っているの?

「彼はただ結婚している事実がほしかっただけなのよ」

 落ち着いたトーンで、衝撃的なことを告げられ、頭をガツンと殴られたような感覚に陥る。一瞬、目の前が真っ暗になった。

 結婚している事実だけ? どういうこと……?


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