庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「千晃さんも早く腹を括るべきだったのよ。こうやって利用されて傷つく人が出てくる前に。でもまぁ、悪あがきも今日までね。今夜、叔父との会食が急遽決まったみたいだから」
会食……? そういえば今日は夕飯はいらないって。その森永社長と会うってこと? もし千晃くんの気が変わったら私たちの結婚はなくなってしまうってこと?
「千晃さん、板挟みになって困っているみたいだから、あなたから結婚のこと断ってあげて。彼、優しい人だから、言うに言えないんだと思う。もうこれ以上彼の苦しむ姿見たくないの」
意思に強い目で見つめられ、唇を噛むしかなかった。
信じられない。信じたくない。千晃くんのあの優しさが、私に向けられた眼差しが偽りだったなんて。
「そもそも、あなたみたいなお子ちゃまが相手にされるはずないのに、なに本気になっているのかしら」
クスクスと笑う声が耳に着く。もう何も聞きたくない。お願い、早くどこかへ行って。
「小原さん?」
今にも崩れ落ちてしまいそうになっていた私の背後から、景山くんの声がした。そしてどうしたの? と言って覗き込んできた。
その隙に三条さんは勝利を確信したような顔で、その場から立ち去ってしまった。