庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
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家に帰ってからも何も手につかず、ベッドの中でずっと丸くなっていた。
千晃くんはまだ森永社長と会食中なのだろう。十時を過ぎたが、まだ帰ってきていない。二人でどんな話をしているの? 三条さんもその場にいるの? 想像するだけで胸が苦しくなる。
だけど三条さんの言う通り、彼女と結婚するほうが千晃くんのためにも会社の為になる。もし私に負い目を感じて言い出せないのだったとしたら、私が切り出すべきなのかもしれない。
彼にはたくさんお世話になった。良くしてもらった。感謝しているからこそ、尚更そうするべきなのかもしれない……。
でも私は千晃くんが好きだ。今さら離れるなんてできないよ。ついさっき止まった涙がまた勝手に溢れ出す。頭ではわかっているけど、心が追い付かない。どうしたらいいのかわからない。
と、その時玄関が開く音がした。千晃くんが帰ってきた。しかも玄関からこっちに足音が近づいてきて、私がいる部屋の前で止まる気配がした。
どうしよう。こんな泣き腫らした顔で会えない。
「椎花? 起きている?」
ノックの後、千晃くんの柔らかな声が届く。
「椎花の好きなケーキ買って来たけど、食べない?」
千晃くんは遅くなったときはいつもお土産を買ってきてくれた。その度に飛びついていたけど、さすがに今日はそんな気にはなれない。