庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「ありがとう、でも今日はいい」
「珍しいな、椎花が断るなんて」
「ちょっと、頭痛くて」
 
 つい嘘をついてしまった。だがそれが間違いだった。千晃くんが心配して部屋へ入ってきたのだ。

「大丈夫? 薬あるけど飲む?」

 布団の中に潜り込む私に優しく問いかけてきて、びくりと体が震えた。

「……い、いい。いらない。苦いの嫌いだから」
「なに子供みたいなこと言っているんだよ」

 クスクスと笑う声が背後から聞こえる。朝出て行った時と変わらない声色に胸がキュッと苦しくなる。
 
 千晃くん、私は千晃くんの幸せを邪魔している? 本当は、彼女と結婚したいの? そうストレートに聞けたらいいのに、私にはそれを確かめる勇気がない。

「熱は?」
「計ってない」

 私の傍で佇む千晃くんからは、少しアルコールの香りがする。それに、甘い香水の様な香りも。これは三条さんの? やっぱり一緒に居たんだね。

「ちょっと額、触るよ」

 そう言って千晃くんの手が伸びてくるのを感じた。慌てて阻止しようとすると、ハラリと上掛けの布団がめくれ、その刹那、目が合ってしまい、慌てて中に潜り込んだ。しまった、見られてしまった。



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