庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
第七章 あなたの言葉しか
翌朝。結局あれからあまり眠れず、起きては眠っての繰り返しで、あまり寝た気がしない。
瞼も重たいままだし、胃もムカムカと気持ちが悪い。
「椎花、おはよう。体調はいいの?」
気分が優れないまま朝食を作りをしていると、千晃くんがぐっと伸びをしながら起きてきた。
そして開口一番に私の体調を心配してくれる。どこまでも優しい人だ。
「千晃くんおはよう。だいぶ良くなったよ」
「それならよかった」
千晃くんはホッとしたように呟いて「顔洗ってくる」と言って洗面台に向かう。だがその背中が少し覇気がないように感じた。
もしかして二日酔い? でも昨夜はちゃんと話ができていたし、そんなに飲んでいるようにも見えなかった。
じゃあやっぱり森永社長となにかあったのだろうか。そう思うと一気に不安な気持ちになる。
「すごくいい匂いがする」
顔を洗って完全に目が覚めた様子の千晃くんが、鼻をくんくんさせながらダイニングテーブルに腰を下ろした。そんな彼にスッとお味噌汁を出す。
「シジミのお味噌汁。お酒を飲んだ翌日にはいいんだって」
「へぇ、おいしそう。いただきます」
湯気の上がるお味噌汁にさっそく箸をつける。そして男らしい喉元をゴクッと上下させるとすぐ、はぁと深い溜息をついた。
だけどその顔はやっぱりどことなく元気がない。ううん、ボーッと考えごとをしているといったほうが当てはまるかもしれない。普通に話しているように見えて、時折一点を見つめたまま固まっている。
ここ最近千晃くんの顔をずっと近くで見てきたんだ。些細な変化だって気が付いてしまう。