庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「私、初めは千晃くんのことそういう対象に見ていなかったのに勝手だよね」
一緒にいる時間が増えるにつれて、どんどん好きになっていって……。今じゃ離れたくないって思っている。
「椎花……」
涙を堪える私を、彩子が心配そうに見ている。その瞳を見ていると決壊してしまいそうで、私は俯いてなんとか耐えた。
思えば始まりはとんでもなくでたらめだった。偶然の再会から彼氏のふりをしてもらうことになって。しかもいきないりの同居。そしてとんとん拍子に婚約。戸惑いの連続だったけれど、気が付けば千晃くんを一人の男の人として好きになっていた。
もっと触れたいし、触れられたいとさえ思っている。でも今更そんなことに気が付いたって後の祭りだ。
「やっぱり。前々から胡散臭いと思っていたんですよ」
どこからともなく聞こえてきた声に、ハッとしながら辺りを見回すと、今きたであろう景山くんが私の隣に腰を掛けるところだった。
「もしかして聞いてた?」
慌てて問うと、景山くんはぶすっとした顔で頷いた。
「小原さん、いいように利用されていただけじゃないですか」
「まだそうと決まったわけじゃないから!」
彩子が私の代わりに反論する。
「確定でしょう。逆に全部勘違いだったっていうほうが無理がありますよ」
断定的に言われ、さらに落ち込む。確かに景山くんの言う通りかもしれない。
「昨日小原さんが『色々と事情があって』っていう顔がすごく幸せそうだったので、俺も諦めがついたのに」
それを聞いて、あっと思った。
そういえばここからの帰り道、景山くんは今まで散々契約結婚なんて最低だとか言っていたのに、いつの間にか批判しなくなっていた。どうしたんだろうって思っていたけれど、そういうことだったんだ。
というか私、そんな顔していたんだ。