庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「千晃さんからもう聞いているかもしれないけれど、私からあなたに話しておきたかったの。昨日の会食ね、とっても楽しくて千晃さんからも良いお返事がいただけたのよ」
「え……?」

 一瞬、息が止まりそうになった。良いお返事って、もしかして……。

 彼女に動揺を見せたくないのに、視線がうろうろと定まらず彷徨う。そんな私を見て、彼女は薄らと笑みを浮かべた。

「千晃さん、やっと決心したみたい。叔父もすっかり喜んじゃって、昨日から上機嫌なの。本当によかった。あなたは? 今からお出かけ?」

 腕組みをし、私をなぞるように見ている。その視線から見下しているのが感じとれる。

 彼女にとって私なんてちっぽけな存在だろう。容姿だって家柄だって、なにもかも平凡で彼女より秀でたものなんてないのだから。
 
 けれど、千晃くんを想う気持ちは負けない。私は会社や体裁、仕事など抜きにして、高宮千晃が一人の男性として好きだ。手放したくないって、今でも抗っている。

「それはよかったですね」
「祝福してくれるの? ありがとう」

 偽物のような笑みで私にお礼を述べる。そんな彼女に私は言った。

「おめでとうございます……って言いたいところですけれど、私はまだ千晃くんからきちんと報告を受けておりませんので」
「だからこうして私が教えてあげているじゃない」
「私は、千晃くんの言葉しか信じません」

 決めたんだ。誰にも惑わされないって。千晃くんの言葉を信じるって。私ができることはそれだけ。自分がどうあるべきか気が付いた。


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