庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「彼女にも困ったものでして。まぁしかし、今月で契約終了なのですがね」
「そうなんですか?」
「えぇ。一年という約束でしたし、彼女がどういう目的で入社してきたのかは、私も社長もわかっていましたからね」
それは彼女が言っていた、会社と会社を結ぶため?
ふと三条さんはそれでいいのだろうかと疑問になる。会社のための駒になっていたとしたら、それはとても虚しいことなのではないのだろうか。彼女の人生は彼女のものなのに。
「話せば長くなるのですが」
「実は、三条さんに少し聞きました」
「そうでしたか。では話が早い。彼らはどうしても我が社を傘下にしたかったようです。うちは今とある技術の開発中でして。もしそれが現実になれば特許もとれるようなもので、恐らく、彼女の叔父、森永氏はそれを狙っていたのだと思います。だから彼女を送り込んできた」
桜庭さんは言い終え、苦笑いを零す。
わかっていて採用した千晃くんもすごいけれど、叔父さんの会社のために自分を売るような真似をする三条さんもすごいと思う。
だけど、結果的にそれだけではなかっただろう。
目的を果たそうとする中、優しい千晃くんに心惹かれて、いつしか千晃くんのことを一人の男性として好きになってしまったのかもしれない。
そうじゃなきゃ、私を脅したり、嘘をついたり、ここまで悪女に徹することはできないと思う。
「さぁ、そろそろ行きましょうか。社長がお待ちです」
桜庭さんがキリットした姿勢で、まるで英国紳士のような振る舞いで私を誘う。
千晃くんの顔を思い浮かべるだけで、胸がドキドキしている。早く会いたくて仕方ない。こんなにも焦がれる想いは、もしかすると生まれて初めてかもしれない。
私は桜庭さんに促されるまま、止めてあった社用車に乗り込んだ。