庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


 用意されていた席は見晴らしがよい窓際で、思わずわぁっと声を上げてしまった。最上階のレストランで食事だなんて、なんだか夢をみているみたいだ。しかも目の前には大好きな彼がいる。それだけで胸がいっぱいになる。

 席に着くと、料理とワインは千晃くんがあっという間に決めてくれた。なんでも卒なくこなしてしまうから目を見張る。

 ソムリエにワインを注いでもらい終えると、自然と見つめ合う。

「乾杯する?」

 そう言ってグラスを上げると千晃くんが「その前に」と口を開いた。

「椎花に謝っておかないと」

 え? とキョトンとしていると、千晃くんが「ごめん」と言って頭を下げた。

「俺の認識が甘かった。三条さんのこと、桜庭に聞いた」

 それを聞いて、思い切り首を振る。

「ううん……もう大丈夫だから」
「嫌な気持ちにさせたと思う。ごめん、それと俺を信じてくれてありがとう」

 千晃くん……。

「椎花にきちんと説明しておくべきだった。変な誤解されたくなくて伏せていた俺が悪い」
「ということは、三条さんとは結婚しないんだよね?」
「もちろん。昨日の会食でやっと納得してもらった。俺が好きなのは椎花だけだって、三条さんの前ではっきり伝えてきた」

 初めて千晃くんの口から「好き」という言葉が聞けて不意に目頭が熱くなる。そんな私の前で千晃くんがいつになく真剣な顔つきで口を開いた。


< 132 / 185 >

この作品をシェア

pagetop