庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「ありがとう……千晃くん」
「泣きすぎだろう」

 ハンカチで何度も涙を拭う私を見て笑っている。すると周りから拍手が聞こえてきて、それと同時にデザートと花束が運ばれてきた。

「嘘、なにこれ? これも千晃くんが?」
「あぁ、たまにはいいだろ? こういうのも」

 ピンクと白を基調とした豪華な花束と、私の好きそうな色とりどりのフルーツでデコレーションされたケーキがテーブルに乗せられる。

 しかもデザートの上にあるプレートには『I'll make you happy』と書いてあって、それを見た瞬間、再び涙が溢れた。

「椎花は本当、泣き虫だよなぁ」
「だって、千晃くんが泣かすようなことばかりするんだもん」

 そう反論するも、優しく見守る様に笑っている。

「いつから考えていたの?」 
「先月くらいかな。ちゃんとプロポーズしたくて」

 そうだったんだ。一緒に住んでいるのに、全然気がつかなかった。

「だから今朝、けっこう緊張してた」

 それを聞いて、あっ! と思った。今朝少し元気がないと思っていたけれど、もしかして緊張していたから?

 そっか、そういうことだったんだ。点と点が結びついてホッとする。

 千晃くんを信じてよかった。もし三条さんの言葉を鵜呑みにしていたら、こんなにも素敵なシチュエーションは待っていなかった。

「千晃くん、こらからもよろしくお願いします」

 再び鳴り始めた拍手の中、花束を抱えたまま頭を下げた。

 きっとこの先色んな困難が待ち受けているだろう。だけれど何があっても彼の側にいる。千晃くんとこの先の人生を歩んでいく。

 一緒に幸せになろうね。


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