庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
食事を終え、店員さんにお礼を言うと、その場を後にする。
とっても楽しくて幸せな時間だった。魔法が解けてしまうようなそんな気持ちになり、ふと後ろを振り返った。
きっとこの日のことは、一生忘れないだろう。
「椎花?」
名残惜しむ私に、少し先を行っていた千晃くんが不思議そうに呼ぶ。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
彼の元に走ると、ちょうど到着したエレベーターに乗り込んだ。そして彼の隣に並ぶと自然と手を組んだ。
ちょっと酔っているから、こんなこともできてしまう。お酒の力ってすごいと思いながら、彼を上目づかいで見つめたまま声を掛けた。
「ねぇ、千晃くん」
「ん?」
正面をただ憮然と見つめる彼に、ギュッと顔をすり寄せる。
「私ね、肝心なこと言ってなかった」
「肝心なこと?」
「私、千晃くんが好き。大好き」
ついこの前、千晃くんに好きだと言われていないと、べそをかいていたけれど、私だって言っていなかったことにさっき気が付いた。
きっとわかってくれていると思うけれど、千晃くんがちゃんと想いを伝えてくれたんのだから私も伝えなきゃ。