庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
アリサとは席が前後になったということもあり、自然と仲良くなった。他のクラスメイトも珍しさからか、彼女に親切にしていた。
でもある時、クラスのボス的な子が言った一言で一変したんだ。
『あの子、夜逃げしてきんだって。だからあんまり関わらないほうがいいってお母さんが言っていたよ』と。
その噂は瞬く間に広がって、せっかく慣れてきたアリサは必然的に孤立した。だけれど私はそれがどうしても信じられなくて、変わらずアリサに話かけていた。
アリサは自分に関わらないほうがいいと逆に私のことを気遣ってくれたけれど、それでも私はアリサとお弁当を食べたり遊んだりしていた。
「椎花、家で愚痴ってたよな。何も知らないくせに、憶測だけで噂を振りまくのは嫌いだって」
「そうだったけ?」
「そうだよ。それ聞いてすげーって思った。俺は面倒なことには首を突っ込みたくなかったタイプだったから余計に」
確かに昔の千晃くんはそんな感じだ。目の前で争い事があっても、傍観しているタイプだった。
「さっき、千晃くんが私のこと強いって言っていたけど、強いんじゃなくて頑固なんだと思う。良くも悪くも自分の目で見たものしか信じられないっていうか」
だからアリサのどんなに悪い噂を聞いたって信じなかった。それは三条さんのことも当てはまる。
アリサが転校してしまうまでの半年間、私は彼女と共に行動していた。どんなに後ろ指を指されたって、アリサは良い子だったし、私は好きだったから。
結局アリサは夜逃げとかじゃなく、ただの転勤族だったということを後で知った。アリサも今まで散々そういう噂の的にされていたから、弁解する気にもならなかったよう。
人とちょっと見た目が違ったり、言葉が違ったりしただけで、よく知りもしないのに憶測で噂を流す人のほうが私は信用できない。