庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
だから去年、桜太の結婚式で再会したときは嬉しかった。しかも兄の結婚を喜ぶ椎花はすっかり大人になっていて、着物姿がすごく綺麗だった。
元々華奢で、儚げな美しさを持っていたが、この日ばかりは一瞬で目を奪われたのを覚えている。
絶対に今日は話しかけよう。いつの間にか変わってしまっていた電話番号も聞き出そう。そう意気込んでいたのに、披露宴の最中の親族というものは忙しそうで、何度も声を掛けようとしたが、椎花は席を立ったり座ったりと大変そうだった。
仕方ない。披露宴が終わってからにしよう。そう思い直し、久しぶりに会った地元の友達と大い
に飲んでしゃべった。
◇
「えー! 高宮くん、東京で起業したのー?」
「すごいねー! さすが千晃様」
披露宴が終わりようやく椎花に話しかけられるという時に、今度は俺が地元の同級生に捕まってしまった。
適当にあしらえばいいのだろうけれど、地元の絆というか、結託のようなものは怖いものがある。
それによからぬ噂で、実家の事業に支障がでると困るという理由もあった。だから俺は数人の女性に囲まれたまま、愛想笑いを続けた。