庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「椎花、お前どこ住んでる?」
「えー?」
「もし椎花さえ嫌じゃなかったら、俺の部屋にこないか?」

 こんな危なっかしい奴を一人で置いておけない。

「なにそれ〜? どういうことぉ?」
「俺も今東京にいる。だから……」
「それって、結婚しようって言ってる? やーん、千晃くんのエッチ!」

 ダメだこりゃ、完全に酔っ払いだ。だけど今なら言えるかもしれない。

「じゃあまじで結婚しようか。椎花」
「ふふ」

 ふふってなんだよ!

「無理だよー、だって千晃くんのこと、そんな風に見たことないもん」

 その言葉の破壊力は半端なかった。一瞬にしてKO負けした気分だった。

 でもここで引き下がるわけにはいかない。ここまで来たら押すのみ。

「じゃあ今度会った時、もしお互いフリーだったら、その時は俺と結婚してくれる?」

 椎花は即答した。

「いいよ~」



 
 だけれど結局、椎花はあの時のやり取りを全く覚えていなかったのだから、ほんと報われない。

 しかもあの後、椎花を親族の控室に運び、ちょうどそこにいた桜太に椎花の番号を聞こうとしたら、全力で拒否されという。

「お前に椎花は渡さない」って、結婚式当日の新郎とは思えない台詞を吐かれ、呆気にとられたまま諦めたのを覚えている。

 今思い出しても腹が立つ。あの、シスコン野郎め。

 まぁでも、結果オーライということでいいのかもしれない。なにせ、来月は俺たちの結婚式なのだから。

 きっとこの先も、この気ままな猫に振り回されるのだろう。だけど最近はそれすら心地よいと思っている。

「おやすみ、椎花」 

 そう彼女の耳元で囁くと、そのまま二人で深い眠りに落ちた。



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