庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「椎花、お前どこ住んでる?」
「えー?」
「もし椎花さえ嫌じゃなかったら、俺の部屋にこないか?」
こんな危なっかしい奴を一人で置いておけない。
「なにそれ〜? どういうことぉ?」
「俺も今東京にいる。だから……」
「それって、結婚しようって言ってる? やーん、千晃くんのエッチ!」
ダメだこりゃ、完全に酔っ払いだ。だけど今なら言えるかもしれない。
「じゃあまじで結婚しようか。椎花」
「ふふ」
ふふってなんだよ!
「無理だよー、だって千晃くんのこと、そんな風に見たことないもん」
その言葉の破壊力は半端なかった。一瞬にしてKO負けした気分だった。
でもここで引き下がるわけにはいかない。ここまで来たら押すのみ。
「じゃあ今度会った時、もしお互いフリーだったら、その時は俺と結婚してくれる?」
椎花は即答した。
「いいよ~」
◇
だけれど結局、椎花はあの時のやり取りを全く覚えていなかったのだから、ほんと報われない。
しかもあの後、椎花を親族の控室に運び、ちょうどそこにいた桜太に椎花の番号を聞こうとしたら、全力で拒否されという。
「お前に椎花は渡さない」って、結婚式当日の新郎とは思えない台詞を吐かれ、呆気にとられたまま諦めたのを覚えている。
今思い出しても腹が立つ。あの、シスコン野郎め。
まぁでも、結果オーライということでいいのかもしれない。なにせ、来月は俺たちの結婚式なのだから。
きっとこの先も、この気ままな猫に振り回されるのだろう。だけど最近はそれすら心地よいと思っている。
「おやすみ、椎花」
そう彼女の耳元で囁くと、そのまま二人で深い眠りに落ちた。