庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「ねぇ、お母さん。お父さん大丈夫かな」

 こそっと小声で言えば、お母さんが腰をかがめ言った。

「きっと大丈夫よ。この日のためにリハビリ頑張っていたんだから」
「でも無理だけはしてもらいたくないの」

 隅に座るお父さんをチラッと見て不安を口にする。お父さんの病状は少しずつだけれど進行している。昨日こっちに到着したお父さんを見て正直驚いたし、弱々しい姿に胸が痛んだ。

「でも椎花とバージンロードを歩くのがお父さんの夢だから。叶えさせてあげて」

 そう言われ、黙って頷いた。

「失礼します」

 そこにノックの音とともに千晃くんが入ってきた。真っ白なタキシードがとっても素敵で、一気に胸が熱くなる。

「椎花、すごく綺麗だ」

 そして私に目を向けると、柔らかく微笑んだ。その姿はまさにおとぎ話の王子様。

「お義父さん、お義母さん、本日は遠方からありがとうございます」

 深々と頭を下げる千晃くんを前に、お母さんが慌てて頭を下げる。なんだかこんなシーンを見てしまうと色んな感情が込み上げてくる。すでに泣きそうだ。お父さんもその場で静かに頭を下げていた。

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