庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「千晃! 椎花を絶対泣かせるなよ!」
そこにお兄ちゃんが噛み付くように言う。もう、さっき香澄さんに注意されたばかりなのに。
千晃くんもやれやれといった様子で、耳を塞いでいる。
「くそうっ、椎花は昔俺のお嫁さんになるって言ってたのにー」
さらにおいおいと泣き始める。もうここまでくると誰もツッコまない。みんなスルースキルを身につけてしまったらしい。
「そろそろお時間です」
「あ、はい。わかりました」
式場スタッフさんが入ってきて、スタンバイするよう言われた。いよいよ本番だ。急に緊張してきて、胃のあたりが痛い。
「椎花、大丈夫?」
千晃くんが重いドレスで手間取る私に手を差し出す。その手にしっかり掴まると、彼の隣に並んだ。
一緒にこのドレスを選んだ時は、まだ千晃くんのことを一人の男性として見ていなかった。でもこの数か月で千晃くんが大好きになり、今では彼に胸を打たれっぱなし。毎日キュンキュンして、毎日どんどん好きになっている。あの時の私には想像できなかった。
「参りましょうか、お姫様」
嬉しそうに微笑む千晃くんに「うん」と思い切り頷くと、チャペルへと向かった。