庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす




 チャペル着くと、先に入って私を待つ予定になっている千晃くんを見送る。

 千晃くんが入って行った瞬間、歓声や絶え間ない拍手が聞こえてきた。きっと中ではリアル王子様の登場に大騒ぎになっているんだろう。

 そんな悲鳴に似た歓声を聞きながら、私は大きく深呼吸した。
 
 ずっとこの日を待ち望んでいた。夢を叶えてくれた千晃くんには感謝している。

 そこに母に車椅子を押されながら、お父さんが私の隣に並だ。

 久しぶりに会ったお父さんは足の筋力が弱り、車いす生活になっていた。昨日その姿を初めて見て、思わず泣きそうになってしまった。

 だけれどお父さんは決して弱音を吐かない。今日だって無理せず車いすで入場しようとお兄ちゃんと何度も説得したけれど、絶対に首を縦に振らなかった。どうしても私と歩きたいと言った。

「お父さん、立てますか?」

 お母さんの声にお父さんが懸命に手に力を入れ立ち上がろうとする。式場のスタッフの人も手伝ってくれ、なんとか立ち上がることができた。

 だけれど足はぐらぐらと今にも崩れ落ちそう。この日のために懸命にリハビリをしたと言っていたけれど、お父さんの病状はこの日を待ってはくれなかった。


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