庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
時折ぐらつきながらも、お父さんはじっと黙ったまま最後まで歩き切った。時間はすごくかかったけれど、一度も足を止めることはなかった。
そんなお父さんが私の手を握り、千晃くんに差し出した。千晃くんは私の手を掴む。
「千晃くん、娘をよろしく頼みます」
ここにきて、お父さんがようやく口を開いた。
「はい、お義父さん」
「バトン、繋いだよ」
周りからすすり泣く声が聞こえる。お母さんもこの時ばかりは泣いていたように見えた。
「大切にします」
お父さんは深く頷くと、お母さんに連れられ席へと向かった。その背中がやけに小さくて、胸が苦しくなった。
お父さんが座るのを見届けると、待ってくれていた千晃くんの方へ向き直す。それを合図に神父さんが口を開いた。
「新郎、高宮千晃、あなたはここにいる小原椎花を、病める時も、健やかなる時も、貧しきときも、妻として愛し敬い慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
そして続けて私に問う。
「新婦小原椎花、あなたは誓いますか?」
「はい、誓います」
私が答えると今日一番の拍手が鳴る。たくさんの人が私達の結婚を祝福してくれているのがわかった。
指輪の交換を済ませると、誓いのキスへとうつる。
ベールを上げられ、千晃くんと目が合うと、自然と笑い合っていた。
「ずっと俺の側で笑っていてください」
そう言って千晃くんはそっと頬にキスを落とした。
出会って20年。再会して半年。恋人歴0日というとんでもない経歴の私達だけれど、堂々と言える。今、私達はとても幸せだと。
拍手が鳴り響く中、私と千晃くんは暫く見つめ合っていた。