庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
久しぶりに二人きりになると、少しくすぐったかった。
「椎花のお母さんって、本当良いお母さんだよな」
「そうかな」
「うちはドライだからさ」
確かに結婚式で久しぶりに会ったけれど、相変わらずクールだった。息子の結婚式でも全然泣いていなかったし。
「海、行ってみようか」
「いいね! 昔よく泳いだよねー」
懐かしい思い出に胸がいっぱいになる。日頃の疲れも吹き飛んでしまう。お母さんに感謝だ。
海に着くと、浜辺を歩いた。もうすぐ夏本番。ここも昔と同様、賑わいを見せるのだろう。
「小学生のころ、椎花がクラゲに刺されて大泣きしたの覚えている?」
「もちろん。千晃くんがおんぶして連れて帰ってくれたんだよね」
「そうそう。桜太はパニックだし、椎花は泣くしで大変だった」
あのころから変わらず千晃くんは私の傍にいた。そして守ってくれていたんだ。
「桃もいつか連れてきてやりたいな」
「うん。そうだね」
「桃の成長が楽しみだよ。椎花みたいなお父さん子にするって決めてるんだ、俺」
威張っていう千晃くんの目が真剣で思わず噴き出した。
「ほどほどにしてよー、お兄ちゃんみたいにならないでね」
「あいつと一緒にするな」
今度は怒っているし。おかしい。これが本当に社長さんなのだろうかと、最近ふと疑問に思うときがある。