庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす



「そういえばさ、椎花に話しておきたいことがあって」
「ん? なに?」
 
 砂浜に腰を下ろしながら、聞き返す。

「いつかは俺、この町に帰ってきて実家を継ごうと思ってる」
「じゃあ今の会社は?」
「実家の会社の傘下にして、桜庭さえよければあいつにたくすつもり」

 ……そうなんだ。知らなかった。だけれどいずれはあの呉服屋を継がないといけない日はくると思っていた。だって千晃くんは一人息子だから。

「うちの会社も軌道に乗って来たし、今実家の事業と連携すれば全国展開も夢じゃない。もっともっと世の中に知ってもらえると思っているし、いずれはグローバル化を目指している」

 そんな先の未来まで考えていたんだ。やっぱり千晃くんはすごい。

「まだまだ先の話だと思うけど」
「私はいつだって千晃くんの傍にいるよ。どこまでもついて行く。家族が一緒にいればどんなことも乗り越えられるって思っているから」

 そう言うと、千晃くんが目を丸くしていた。

「椎花は前から強い子だけれど、母親になって益々強くなったよな」
「そうかな」
「逞しい。それでいて相変わらず心が綺麗だなって思う」

 そう言われ、胸の奥がきゅんと疼く。



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